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江戸正で鰻

そういえば、子供の頃は特に好きだった覚えはありません。うな丼よりは親子丼のほうがだんぜん好きでした。
うなぎの蒲焼にも全然こころ踊らず。まして、白焼きなど。肝吸いは、どちらかというと敬遠レベル。

おとなになって、東京の名店といわれるお店の情報を知ったり(野田岩とか尾花とか)、京都での美味しいお店の情報を知ったり、丑の日のニュースを見たり。
そして、気づいたら「鰻、おいしいじゃないの!やっぱり夏は鰻よね。」という気持ちになっていました。
ところが最近は鰻の稚魚が捕れないので、養殖も難しくなっているらしいではありませんか。
そもそも鰻の生態、育つ環境、などについてもまだよくわかってないらしいです。卵の段階から、なんとかうまく育てられませんでしょうか。いや、卵の前の段階からも。

天然うなぎが目の玉が飛び出るほど高級になった現在、その天然うなぎに勝るとも劣らない利根川を表す愛称「坂東太郎」の名のついた養殖ウナギのブランド品があるそうで、それを関東風の焼き方で出してくださるというお店に行ってきました。
関東風ということは蒸して焼くということでしょうね。

丑の日でもなんでもない日。それも開店と同時。狙って行きました。
前日までにお席の予約をし忘れたからなのですけれど。
それでも、二つのテーブルには予約席の札が立っていました。ああ、とにかく席があってよかった。

江戸正 坂東太郎

普通の鰻のメニューもありましたが、お目当てはやはり「坂東太郎」。の、うな丼。お吸い物として選べる中から肝吸いを選んで付けました。
30分ほどお待ちいただきます、との言葉も嬉しい鰻屋さん。だんだんに香ばしい香りが漂ってきて、胃が鰻を待っています。
ビールを飲みながら、なにかつまみながら。というのも、もちろん素敵には違いないのですが、この時は空腹を感じるのがなによりのオープニングでした。

待ってました!うな丼と言ってもお重です。

江戸正 坂東太郎

蓋を開けると、なんと美しい焦げ色でしょうか。お重の角の部分からお箸ですくい取って口に運ぶと、アチ、アチチ。
そして、鰻の身はこの上なくふっくらとしてホロホロで、大袈裟ではなくとろけるようです。蒸して焼いてるから、これですよ。
ご飯はタレが染み込んでいる一粒一粒のお米の味が際立っています。ご飯の固まりではない、というのか。
熱くて、一噛みを躊躇するほどです。

江戸正 坂東太郎

一口目から最後まで、夢見心地の一時でした。

江戸正 坂東太郎

食べ終わったとき、家族が「全然、皮が硬くなかった。」と言いました。
「皮?皮なんて、ありましたっけ・・?」
それほど皮の存在感がなかったのです。これは価値のあるうな丼でした。

天然うなぎのうな丼は張り紙のメニューを見ただけ。一人前8500円と書いてありました。

江戸正 坂東太郎

鰻や穴子や鱧などの長いもの嫌いの人が、わたしの親しい人の中に。その人は今日のこの記事を読んでも心躍らないだろうなあ。
まあ、そういうものです。

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